小関順二 の記事
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第94回選抜高等学校野球大会 総括
今大会の決勝「近江 対 大阪桐蔭」戦に臨む近江には心理的な負担があったと思われる、エース、山田陽翔(3年)はこれまで3月25日の聖光学院、28日の金光大阪、30日の浦和学院戦をすべて1人で投げ抜き、6日間で投げた球数は384球。「1週間で500球以内」という球数制限を横目で見ながら残り116球をどう配分するのか。この大阪桐蔭戦は1回表に22球、2回表に19球投げ、このペースで行けば6回には116球を投げ切ってしまう計算になる。山田1人がマウンドに立ってきた近江にとって、山田の降板は勝利の切り札を放棄するに等しい。少ない球数で投げなければならない、という山田の焦りは好球必打を身上にする大阪桐蔭攻撃陣には大歓迎だったろう。 ここまで一人で投げぬいてきた近江のエース、山田 1、2回に1点ずつ入れ、3回表には2番谷口勇人(3年)が死球で出塁、3番松尾汐恩(3年)が初球のストライクを取りにきた123キロのストレートを振り抜くと打球はレフトポール際に飛び込む2ランとなり、スコアは5対0と一方的になる。近江ベンチはここで山田に代わって左腕に技巧派、星野世那(3年)をマウンドに送るが、星野は8回途中にマウンドを降りるまで5回3分の1を投げ、被安打12、失点14の成績で、スコアは18対1の大差がついていた。 3回表、大阪桐蔭3番の松尾が2ランHR この試合で大阪桐蔭打線が放った安打数は16本。そのうちホームランは4本を数え、今大会記録したホームラン数は1984年のPL学園を上回る11本。準々決勝の市和歌山戦で6本、準決勝の国学院久我山戦で1本、そして決勝の近江戦が4本である。もし新型コロナウイルス陽性者が続出して試合を辞退した広島商戦が行われていたら、この本数はさらに増えていた可能性があるのだ。 今大会のベストナインは? 今大会31試合で飛び出したホームランは18本。これは〝記録的な″という表現を用いてもいい少なさだが、大阪桐蔭だけは11本の本数を積み上げ、これは清原和博(元西武など)、桑田真澄(元巨人)がいた84年のPL学園を上回る大会記録である。私が選ぶ今大会のベストナインは次の通りである。投手/右腕=川原嗣貴(大阪桐蔭3年)、左腕=前田悠伍(大阪桐蔭2年)、捕手/松尾汐恩(大阪桐蔭3年)、一塁手/丸山一喜(大阪桐蔭3年)、二塁手/星子天真(大阪桐蔭3年)、三塁手/伊藤櫂人(大阪桐蔭3年)、遊撃手/金田優太(浦和学院3年)、外野手/海老根優大(大阪桐蔭3年)、黒田義信(九州国際大付3年)、若狭遼之助(星稜3年) 大会前には佐々木麟太郎(花巻東2年)、真鍋慧(広陵2年)佐倉俠史朗(九州国際大付2年)の強打が話題になったが、終ってみれば大阪桐蔭の“一強無双″だけが際立った大会だった。 終わってみれば大阪桐蔭の強さがひときわ目立った今大会
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小関順二 2022年3月31日 17時00分 -
第94回選抜高等学校野球大会 準決勝を終えて
準決勝2試合目が始まる前、野球愛の強さで知られるお笑い芸人、いけだてつやさんと顔を合わせ、国学院久我山をコーチしたイチロー氏のことが話題になった。やはりコーチした智弁和歌山が昨年夏の甲子園大会に優勝して、今大会は国学院久我山が準決勝に進出。驚異的な〝イチロー効果″と言うほかない。直接コーチングした技術的なことが血肉になったと言うより、イチローという超一流の野球人に触れたことで心理的・精神的な部分に化学反応が起こり、実力以上のものが生み出されたのだろう。別れ際、智弁和歌山の面々に言い残した「ちゃんとやってよね」は、いい余韻を残す金言である。何よりも笑いが起こったのが素晴らしい。いけださんも「素晴らしい」と絶賛していた。 そのイチロー効果も大阪桐蔭の破壊力には及ばなかった。1回表、打ち取られたが1番伊藤櫂人(3年)と3番松尾汐恩(3年)が放った外野フライはいずれもフェンス際に到達し、その後の猛爆を予感させた。この1回は2死一塁から4番丸山一喜(3年)、5番海老根優大(3年)、6番田井志門(3年)が安打を連ねて3点を先取。3回には3番松尾から6番田井まで4連続安打で3点、さらに8番鈴木塁にも2点二塁打が飛び出し、ほぼ勝敗の行方は見えた。素晴らしかったのは先日も触れたように大阪桐蔭各打者の積極的なバッティング。〝好球必打″は同校のキャッチフレーズのように言われるが、近年はこれほど積極的に打って行かなかった。それがこの試合では19安打のうちファーストストライクを打ったヒットは8本あった。 この好球必打がゲーム中盤には国学院久我山にも波及。6回裏に3安打を連ねて2点を返すのだが、9番萩野颯人(2年)、1番齋藤誠賢(3年)、3番木津寿哉(2年)のヒットはいずれも初球を打ったもの。この回に投じられた13球のうちストライクの見逃しが1球だけというところに好球必打の効果の絶大さがわかる。 大阪桐蔭の先発、川原嗣貴(3年)は1回戦以来のピッチングだったが、素晴らしかった。やはり野球愛の強いお笑い芸人、かみじょうたけしさんと記者席あたりで話をし、かみじょうさんは川原を見るなり「藤浪(晋太郎)に似てません?」と言い、私は「ああ似てますね」と返し、頷き合った。決勝が前田悠伍(2年)の先発が予想されているため、こんなに素晴らしい川原を「もう見られないかもしれないんですね」と少ししんみりした。市和歌山戦に続く波状攻撃を目の当たりにし、思い出されるのは1回戦の鳴門戦。この強力打線も8安打、3失点に抑えた左腕、冨田遼弥(3年)は本当に見事だった。
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小関順二 2022年3月30日 18時00分 -
第94回選抜高等学校野球大会 準々決勝を終えて
熱戦が続く「第94回選抜高等学校野球大会」。準々決勝を終えての総括をスポーツライター・小関順二さんに寄稿していただきました。 投打ともにスキのない大阪桐蔭 2回戦が終った時点でホームランはわずかに3本。大会前にホームランが期待された佐々木麟太郎(花巻東2年)、真鍋慧(広陵2年)が不発のまま甲子園をあとにし、今大会はもうホームランが出ないかもしれないと愚痴っぽくなっていたのが昨日のこと。それが準々決勝・第1試合の「浦和学院対九州国際大付」戦で浦和学院の伊丹一博(3年)、鍋倉和弘(3年)にホームランが飛び出すとわずかに気持ちが晴れやかになり、「どうして浦学のバッターの打球は伸びるのだろう」とパワーの背景に思いをめぐらすようになっていた。 3試合目の「国学院久我山対星稜」戦で下川邊隼人(国学院久我山3年)に2ランが飛び出し大会通算6本目。2ケタに届くかもしれない、と欲はどんどん深まっていく。4試合目の「市和歌山対大阪桐蔭」戦は、強打の大阪桐蔭でも花巻東、明秀日立の強力打線を封じた米田天翼(3年)が相手では一発攻勢は期待できない、というのが常識的な予想だったが、1回戦の鳴門戦で早いカウントから打って出る好球必打で好左腕、冨田遼弥(3年)を攻略しているので、「ひょっとしたら」という思いはあった。 4回までは市和歌山の先発、淵本彬仁(3年)の高低の攻めに2点に抑えられていた。それが5回に2番谷口勇人(3年)が先頭打者ホームラン、さらに2死二、三塁で7番星子天真(3年)が3ランを放つと、勢いが止まらなくなった。6回に先頭打者の1番伊藤櫂人(3年)がレフトスタンドに放り込み、代打の工藤翔斗(3年)が2ラン、打者一巡して走者を一塁に置いて伊藤が2打席連続ホームランを放ち、6回が終了した時点で14対0の大差がついていた。7回にも5番海老根優大が左中間に2ランを放つが、クリーンアップが放ったホームランはこれが初めて。それ以外は1番、2番、7番、8番(代打)によるスタンド越え。こういうところが大阪桐蔭の凄さ、というか怖さだろう。 投手ではエース格の左腕、前田悠伍(2年)が初めて甲子園のマウンドに上がった。ストレートの最速は143キロと普通だが、130~143キロのスピード差で四隅を突き、フォークボール、チェンジアップ、スライダーなど高低を投げ分ける変化球の精度もピカ一。6回まで毎回の12三振を奪い、打たれたヒットはわずかに1本。この前田にリリーフした背番号1の別所孝亮(3年)、鳴門戦で完投した川原嗣貴(3年)が揃い、本当にスキが見つけられなくなった。彼らをリードする捕手の松尾汐恩(3年)が6回の守りからショートに就き、軽快なフィールディングを見せるなど多彩なタレントが揃った。優勝候補の筆頭と言っていいだろう。
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小関順二 2022年3月29日 9時30分 -
第94回選抜高等学校野球大会 2回戦を終えて
勝負を決したのは“走塁力” 2回戦で最初に注目したのは「九州国際大付 対 広陵」戦。広陵にはプロのスカウトが注目する内海優太(3年)、真鍋慧(2年)、九州国際大付には佐倉侠史朗(2年)、黒田義信(3年)というスラッガーがいて、私の周囲には強打の応酬を期待する声が多かったが、勝負を決めたのは走塁だった。私が俊足の基準にするのは打者走者の各塁到達タイム。具体的には「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」で、これを成し遂げたのは広陵の0人に対して九州国際大付は3人(7回)。とくに目立ったのが1番黒田で、第1打席で二塁打を放ったときの二塁到達タイムが7.66秒で、第3打席の内野安打のときの一塁到達タイムが3.87秒、第5打席の三塁打のときの三塁到達タイムが11.06秒というとんでもない記録ばかりだった。この走力に左腕、香西の130キロに満たない〝遅球″を駆使した超絶技巧が絡み、九州国際大付が優勝候補の広陵を一蹴した。 息詰まる投手戦となった「木更津総合 対 金光大阪」 同じく1点を争う投手戦になった「木更津総合 対 金光大阪」戦も印象に残った。金光大阪が6回裏に1点、木更津総合が8回表に1点入れ、試合は今大会6回目の延長戦に突入。勝負は13回裏、2点を追う金光大阪が2四球、2死球で3点を入れ逆転サヨナラ勝ちするが、4継投した木更津総合に対して先発の古川温生(3年)は1人で延長13回を投げ続けた。 木更津総合が5安打、金光大阪が7安打とたいして変わらないが、投手が与えた四死球は木更津総合の11(6四球、5死球)に対して金光大阪は4だった。肩・ヒジの負担になる延長13回(投球数160)の完投は美談にできないが、古川の危なげのないピッチングを見ればマウンドに送り続けた横井一裕監督の気持ちは理解できる。 「走力と工夫」が光った国学院久我山 「高知 対 国学院久我山」戦は国学院久我山の外野陣の守りに注目した。大野良太(3年・左翼手)、齋藤誠賢(3年・中堅手)、木津寿哉(2年・右翼手)の3人が捕手のサインを確認すると同時に大きく右あるいは左に動くのだ。右(ライト)方向に動くときは右打者の外角寄り、左(レフト)方向に動くときは内角寄り(左打者のときはその反対)にボールがくることが多かったが、時々〝逆球″もあり、打者は配球を絞るのが難しかっただろう。 全力疾走でも目立った。「一塁到達4.3秒未満~」をクリアしたのは高知の2人(2回)に対して国学院久我山は3人(6回)。投手が投げ、打者が打つ以外の「走力と工夫」でも高知を上回り、初の準々決勝進出を決めた。 “自分のタイミング”で呼び込む星稜各打者 「星稜 対 大垣日大」戦で注目したのは星稜各打者のタイミングの取り方。打者にとってタイミングの取り方は「最も重要」と言ってもいい。投手がステップする段階で始動するのが普通だが、星稜の1番永井士航(3年)、4番若狭遼之助(3年)、5番角谷飛雅(3年)たちは早い段階で一本足ないしはすり足で始動、投手の投げるタイミングに合わせてステップしていた。これは投手の動きに惑わされないための工夫で、監督の意図がきちんと各打者に伝わっていると思った。遅い球を武器にする大垣日大の先発、五島幹士(3年)の技巧にも惑わされず3回までに4安打、3得点を重ね主導権を握ったが、各打者の中で最も注目したのが若狭。始動の動き、ステップの動きに急いでいる様子がまったくないのだ。投手のボールを放すリリースまでの動きをじっくり見定め、全球種を自分のタイミングで呼び込み、3回裏には五島が投じた122キロのスライダーを完璧に捉えてレフトスタンドに放り込んだ。 星稜の先発、マーガード真偉輝キアン(3年)は6回限りで降板するまで最速141キロのストレートにカットボールを主体とする変化球を交えて大垣日大打線を翻弄した。テークバックのとき右腕が背中のほうまで入るピッチングフォームはコントロール難を思わせたが、6回までに与えた四球2、与死球1はいい意味で予想を裏切った。 接戦に終止符を打つ“投手心理”を熟知したバッティング 「市和歌山 対 明秀日立」戦は米田天翼(市和歌山3年)と猪俣駿太(明秀日立3年)が息詰まるような投手戦を演じ、9回表が終了するまで1対1のスコア。米田はストレートの最速が143キロと言ってもほとんどが130キロ台で、1回戦の花巻東戦で佐々木麟太郎(2年)を圧倒したピッチングを予想した明秀日立各打者は面食っただろう。猪俣のピッチングも技巧的だった。左肩が早く開くピッチングフォームはたとえば右打者から見れば外角にボールが集まりそうに見えるが、6回裏の2死満塁で迎えた6番田嶋優汰(2年)に対して外角を主体に攻めてボールカウントを2-2とし、5球目に内角低めを突いて見逃しの三振に仕留めたピッチングは見事だった。 猪俣のもう一つの特徴は低めにボールが集まること。体が早く開いてもリリースでボールを潰している(押さえ込んでいる)のでボールが低めに集まっていた。ピッチングフォームからは予想できない球筋で、市和歌山各打者は最後まで的を絞り切れていないように見えた。この猪俣からサヨナラ安打を放ったのが投手の米田。2-1から投じられた126キロのフォークボールを右中間に打ち返したバッティングは投手心理を熟知した「投手」ならではの一打と言っていいだろう。
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小関順二 2022年3月27日 18時30分 -
第94回選抜高等学校野球大会 1回戦を終えて
連日熱戦が展開される「第94回選抜高等学校野球大会」。第6日の第1試合をもって出場全32校が甲子園の土を踏んだ。アマチュア野球取材歴34年のスポーツライター・小関順二氏に1回戦の16試合を振り返ってもらった。 吹き荒れる「投高打低」の嵐 大会前は〝打高投低″が囁かれていたが、大会が始まるとその風評とは真逆のホームランが出ない投高打低の嵐が吹き荒れている。その象徴的だった試合が5日目の「花巻東 対 市和歌山」だ。花巻東の主砲、佐々木麟太郎(2年)は高校通算ホームラン数が1年ちょっとで同校OB、大谷翔平(エンゼルス)が3年間で積み上げた56本に並ぶスラッガーだが、市和歌山のエース、米田天翼の前に4打数ノーヒット(2三振)に抑えられていた。 佐々木の打撃フォームはホームランが出やすいと言われるアッパースイングだが、投手の投げる球がアッパースイングの軌道と衝突しづらいのは高めと内角。米田は第1打席からこの高めと内角をストレートで攻め続け、佐々木のバットを封じ込めた。 大会屈指のスラッガー、佐々木麟太郎(花巻東)は1回戦で姿を消す。 急きょ出場の近江がバランスのよさを見せる 2日目の「長崎日大対近江」戦でも内角攻めが見られた。昨年夏の甲子園大会で注目された近江の山田陽翔は最速146キロのストレートに縦変化のスライダー、カーブにツーシームを交えた多彩なピッチングを展開、延長13回(165球)を投げ抜いて7安打、2失点に抑えた。新型コロナウイルスの集団感染が発覚した京都国際に代わる出場だったが、急きょ出場が決まったチームとは思えないバランスのよさを見て、近畿の実力を思い知らされた。 注目の好投手、山田陽翔(近江) 屈指の投手戦が展開された「山梨学院 対 木更津総合」 屈指の投手戦として注目されたのが3日目の「山梨学院 対 木更津総合」戦だ。越井颯一郎(木更津総合)は早い動きが一転してゆったりした動きに変わるピッチング動作で山梨学院各打者のタイミングを狂わせれば、榎谷礼央(山梨学院)は右打者の内角にツーシームを投じたあと外角にスライダーを投げるという攻撃的なコーナーワークを見せ、敗れたとはいえ強豪、木更津総合を13回まで翻弄した。 息詰まる好ゲームが展開された「山梨学院 対 木更津総合」 スキのない打撃を見せる広陵 打線で最も注目を引いたのは初日に登場した広陵だ。敦賀気比の好投手にクリーンアップの内海優太、真鍋慧、田上夏衣が3安打ずつ放っているが、打撃結果よりもどこに投げても捉えられてしまうのではないか、と思わされるスキのない打撃フォームが圧巻だった。2回戦では佐倉が主軸を打つ九州国際大付戦と激突する。 優勝候補筆頭の大阪桐蔭は上々のスタート 1回戦最後に出場した大阪桐蔭は優勝候補筆頭の名に恥じない王者の戦いを見せた。川原嗣貴と松尾汐恩のバッテリーと大会屈指の好左腕、冨田遼弥(鳴門)を攻略した攻撃陣を擁し、上々のスタートを切った。
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小関順二 2022年3月24日 13時20分 -
第94回選抜高等学校野球大会 展望
今センバツ大会の有力校は昨年秋の明治神宮大会を制した大阪桐蔭を筆頭に、準優勝校の広陵、準決勝に進出した花巻東、九州国際大付の4校だ。その4強は1回戦では当たらないが、近接したブロックにいるので勝ち上がれば2回戦、準々決勝で当たることになる。 1回戦は強豪同士の対戦が少ない中で2日目の敦賀気比対広陵、3日目の木更津総合対山梨学院、5日目の市和歌山対花巻東が注目を集める。 広陵は優勝候補の2番手に挙げられる強豪で、明治神宮大会決勝では大阪桐蔭相手に主軸の2年、真鍋慧が3安打2打点、田上夏衣が2安打2打点を挙げるなど強打を遺憾なく発揮、7対11で敗れたが王者をあわやという場面まで追いつめた。対戦相手の敦賀気比も明治神宮大会2回戦で大阪桐蔭と対戦し、エースの上加世田頼希が持ち前の制球力を発揮、中盤まで互角の戦いを演じた。 木更津総合と山梨学院はともに昨秋の関東大会で準決勝まで進出している。木更津総合には越井颯一郎、山梨学院には榎谷礼央という大会屈指の本格派右腕がいて、榎谷は準決勝の浦和学院戦で延長10回を投げ抜き、チームを決勝に導いている。 市和歌山対花巻東は注目度ではナンバーワンと言っていい。花巻東の主軸、佐々木麟太郎は2年生にして高校通算50本塁打を記録する超高校級スラッガーで、その前後にも強打を誇る田代旭に、2年の熊谷陸、千葉柚樹が揃う。迎え撃つ市和歌山のエース、米田天翼は最速148キロの快速球を武器にする本格派右腕で、昨年の近畿大会1回戦では強打の神戸国際大付を1失点完投に抑えている。 注目選手はここまでに挙げた以外でも投手では森下瑠大、平野順大(ともに京都国際)、前田悠伍(大阪桐蔭2年)、松林幸紀(広陵)、冨田遼弥(鳴門)、大野稼頭央(大島)が140キロを超える本格派として注目を集め、打者では石川ケニー(明秀日立)、松尾汐恩(大阪桐蔭)、戸井零士(天理)、佐倉俠史朗(九州国際大付)がプロスカウトのチェックを受けている。 優勝候補が勝ち上がれば広陵と九州国際大付が2回戦、大阪桐蔭と花巻東が準々決勝で当たる。またイチローのコーチを受けた国学院久我山と、イチローのコーチを熱望する有田工の戦いも面白そうだ。
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小関順二 2022年3月9日 18時00分